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                   -使い方と選び方-

                                                   2000.10.1

                             有)ケイエス まごの手介護サービス代表取締役
                                                    工学博士
                                                  介護福祉士
                                               介護支援専門員

                                                   久保田 正


平均寿命が延びている昨今ですが、どこも悪くないお年寄りはごく稀であって、どこかしら具合悪く、お医者さんの世話になっている人が多い状態です。

紙おむつの世話にならざるを得ないお年寄りもたくさんいます。老人ホーム、高齢者向け病院では夜間には人手も足りないため、紙おむつで一晩過ごす人がいます。寝たきりの高齢者のいる家庭でも、夜中に頻繁に起きるのでは介護者も身体を壊してしまうので紙おむつを使っていることが多いようです。比較的健康な方でも少し尿を漏らしてしまうという失禁の人もたくさんいます。

さて紙おむつとは一体どういう性質のものなのか。日頃使っている人も介護している人も意外と知らないことがあるようです。性質を十分把握したうえで上手な利用の仕方を工夫することが大切です。また種類とかメーカー別とか、たくさんある紙おむつの中から利用者に最も合ったものを選ぶことも必要です。

ここで使っている科学的手法は高いレベルのものを使用していません。誰でもできる手軽な実験で性質の把握を試みています。この分野についてはメーカーの研究所では細かくされていると思いますが、一般にはその情報が入りません。この資料は紙おむつを科学的に見る入門知識と解釈して頂ければと思っています。


Ⅰ 紙おむつの種類

この項目はご存知の方が多いので、これからの話の用語の説明程度に述べます。紙おむつの呼び方はメーカーによっていろいろあるのですが、一般的な分類は次の通りです。

パンツ・タイプ:
  ①おむつカバーのように最初は広がった状態のものをお尻の周りにしっかり巻くもの
    (介護用パンツ・タイプと呼ぶメーカーもあります)
  ②普通のパンツのように、はくタイプのもの。失禁パンツと呼ばれることもあります。
    (動けるパンツ・タイプと呼ぶメーカーもあります)

フラット・タイプ(平型)
  おむつカバーとか布パンツを併用して用いる。

尿とりパッド
  おむつカバーとか布パンツの中に入れて用いる。
  フラット・タイプを小型にしたようなもの。


Ⅱ 紙おむつの構造

大人用紙おむつを使っている人は多いでしょうが、構造がどうなっているのか実際に紙おむつを分解して調べた人は少ないと思います。第1図を見て下さい。

                         第1図


(1)パンツ・タイプ

これはパンツ・タイプの中の所謂、介護用パンツ・タイプであって、肌に当たる方を上にして一番上にプラスチック繊維の不織布があります。これは繊維群を圧縮したようなもので、幅が数十ミクロンの貫通孔が無数にあります。従って、空気とか水蒸気の分子は容易に通ります。
その下に両開きになる布があって、中にパルプ繊維が綿状に充填されています。このパルプを全て取ると、中に通気性のある薄い布に包まれた層があります。
この層は吸水性ポリマー粒子をパルプ綿の中に分散させたものです。なお布の部分に伸縮性のあるようにギャザーが入っています。

(2)尿とりパッド

全体としてパンツ・タイプと同じ構造ですが、吸水性ポリマーを分散させた層は綿を構成布に糊付けする等、簡易化しています。
ギャザーのあるものもあるが、無いものが多い。

(3)紙おむつの構成部分の重量比(一例)

①パンツ・タイプ(介護用)
   全体の重量 124グラム                             重量比
      パルプ層                            40グラム   32%
      吸水性ポリマーをパルプ繊維の中に分散させた層   45グラム   36%
      その他の構成材                       39グラム   32%

②尿とりパッド
   全体の重量 36グラム                              重量比
      パルプ層                            10グラム   30%
      吸水性ポリマーをパルプ繊維の中に分散させた層   15グラム   42%
      その他の構成材                       10グラム   28%

(4)吸尿量

尿パッドの吸水性ポリマー層に35℃の水を200ccずつ加えます。400ccまでは漏れ感はない。600ccも吸水します。800ccも吸水するが漏れ感が出てきます。漏れ感というのは触るとか押すとか何らかの圧力を加えることにより不織布を通じて液体としての水が外部へ滲み出てくることとします。
パンツ・タイプ(介護用)の吸水性ポリマー層で1000ccまで吸水します。
ここで言う吸尿量とは紙おむつ全体の吸尿能力ということで、実際の身体に付けたとき、1回の排尿量が200ccなのだからこのおむつは何回まで使える、といった計算をしてはいけないのです。
外国、例えばスウェーデン製の紙おむつには吸尿量表示がなされています。1000ccと書いてあるからといって、5回の排尿が可能ということにはなりません。そのことは後で理由を説明します。

(5)有効吸尿量

紙おむつ使用時、実際に吸尿量がいくらまでなら漏れないのか、これが重要な目安となります。
これを一応、有効吸尿量と呼びます。有効吸尿量にはいろいろなパラメーターがあると思いますが、排尿速度と有効吸尿量に関する実験例を次に示します。

①実験方法
尿パッドの中心部にメチレン・ブルーの水溶液200ccを滴下する。滴下速度を(a)30秒 (b)5分 の2通りとする。前者は健康成人の1回の排尿速度である。後者は少しずつ排尿する人の極端な場合である。

②紙おむつの吸尿部分の拡がり(200cc滴下)
  (a) 横12cm×縦12.5cm×高さ1.3cm
    漏れは全く無い
  (b) 横8.5cm×縦8.5cm×高さ1.6cm
    漏れは全く無い
⇒滴下速度の遅い方が吸尿部分の拡がりは小さい

③紙おむつの吸尿部分の拡がり(200cc追加滴下)
  (a) 吸収速度が遅く滴下した水は紙おむつ表面を流れ、横のギャザーで一部は止まるが残り
    はそこを越えて流れ出した。横方向に流れた部分は数秒後に吸収された。
    横14cm×縦24cm×高さ1.3cm
  (b) 紙おむつの表面上を水が流れるが横のギャザーで滴下した水は止まる。
    横15cm×縦15cm×高さ1.8cm

この実験結果は、おむつの取り換え頻度に1回の排尿速度が関係していることを示しています。排尿速度は個人差があるので、よく把握しておく必要があります。

                         第2図


Ⅲ 紙おむつの吸尿の原理

(1)パルプ層

パルプの綿を充填した層、すなわち肌に近い層での吸尿は、
  ① パルプ繊維への尿の吸着-物理吸着と化学吸着
  ② パルプ繊維綿の中に生じる空隙での毛細管凝縮
によるものと考えられます。
この場合パルプ層の目立った容積膨張はありません。

                         第3図

(2)吸水性ポリマーをパルプ繊維綿に分散させた層

紙おむつの全吸尿量のほとんどをここで行う。
  ① 吸水性ポリマーは直径0.1~0.5mmの粒子でガラスの砕片と類似した外観をしています。
    光学顕微鏡で見ると、破面、すなわち溶融塊とか溶液が凝固した塊をミルで砕いた破砕
    面の様子がわかります。

  ② この高分子の化学構造式は第4図のようになっています。

                         第4図

    他にも何種類かの吸水性ポリマーがありますが、代表的なものがこれです。
    でんぷん、アクリル・ニトリルをセリウム塩触媒を用いてグラフト重合して、さらに加水分解
    して製造したポリ・アクリル酸ナトリウム-でんぷんグラフト重合体というものです。でんぷ
    んの代わりに高分子電解質のカルボキシルメチルセルローズを用いるものもあります。

  ③ 高吸水性ポリマーの吸水力は、これを水の中に入れた場合、自由に動けるNa+イオンが
    高分子網目から外に出ることにより、COO-イオンが過剰に存在することになりCOO-イオ
    ン同士が反発し合うことにより、分子が拡大します。

  ④ 高分子は架橋構造をとっており、構造の無限の拡大、言い換えれば、溶解ということは生
    じません。
    ある膨潤度で構造の拡大は制御されます。これまでの開発ではでんぷん-アクリル酸グ
    ラフト重合系で最大の吸水力が得られているといわれています。
    布とかスポンジも水を吸いますが、自重の20倍の吸水力です。
    高吸水性ポリマーでは自重の500倍ぐらいまでの吸水力があります。


Ⅳ 人体模型によるおむつの漏れテスト

①紙おむつ内の尿の伝搬

尿パッドにスポイトでメチレン・ブルー水溶液を1点(直径2cmの円)に加え、どのように浸透してゆくか調べました。表に見るように、縦・横の広がり方は意外と少ない。しかし、高さ(あるいは厚さ)方向を見ると、厚みが増してゆきます。
パルプ層は吸収速度は速いが前に述べたような吸水原理に基づくので、吸水量は綿の容積程度に限られています。若干、吸収速度は遅いが、吸水量の多い高分子ポリマーに水分は移ってゆきます。
ということは、一部分に排尿しても、おむつ全体に拡がるということではなく厚さ方向に吸収されることを意味し、これは、紙おむつの構造からみて当然と言えます。厚さ方向の伝搬は限度があって、ある吸水量以上になると周りの部分が吸水の役割を担うようになります。少しずつ排尿する場合がこれに相当します。
単位時間の排尿量が多い場合、吸水ポリマーの吸収速度が比較的遅いので、厚さ方向の伝搬が間に合わず、周りのパルプ層及び吸水ポリマー層に伝搬してゆきます。

②人体模型を使った紙おむつの尿の漏れ実験

                         第5図

人体模型におむつをして、ピペットを中に差し込み35℃の水を注入しました。漏れは吸い取り紙で検知。注入時間は200ccを2分間。

  (a) パンツ・タイプ(介護用)をおむつカバーとして中に尿とりパッドを併用したケース
                                   (尿とりパッドに水を注入)
     注入度     股などへの漏れ状況
       200cc     漏れはない
       400cc     漏れはない
       600cc     漏れあり(内股)

  (b) パンツ・タイプ(動けるタイプ)
     注入度     股などへの漏れ状況
       200cc     漏れはない
       400cc     漏れはない
       600cc     漏れあり(内股)

③ギャザーの役割

ギャザーは排尿速度の速い場合有効であるが、漏れ防止の主要な役割はパルプ層、吸水ポリマー層にあり、この部分の容積、量、配置などが関係するのだと思います。
内股部分への伸縮材の強さは身体との密着を良くするために考慮すべきことですが、身体との隙間を完全に無くすことは、特に皮膚にたるみのある高齢者ではできないことであり、また、あまり強く密着させると痛さを感じることになるので、この辺は設計の難しいところだと思います。


Ⅴ 紙おむつの通気性と吸収された尿の蒸発

①紙おむつの通気性

紙おむつの通気性は紙おむつの構造、微細組織から見て理解できるように、肌に当たる不織布は繊維群を圧縮した形態で各繊維間に隙間があり、ここから液体、気体が自由に通行できます。
パルプ層はパルプ繊維が綿状に詰まっており吸尿後は隙間に水分が凝縮するので通水性、通気性は若干悪くなるが隙間が大きいので完全になくなることはないと考えられます。
高分子ポリマー層は吸尿前は繊維の綿の状態なので通水性、通気性はあるが、吸尿後はゼリー状に変化するので通水性も通気性もなくなります。
肌側と反対の防水布は通水性はなく通気性もほとんどありません。

②吸収された尿の蒸発について

紙おむつに吸収された尿はその後どうなるのでしょうか。下にある第6図は、一旦吸尿した尿とりパッドを放置したときどうなるかを示したものです。
開放系、すなわち蒸発したガスが飽和状態に達しないでいくらでも蒸発できる状態に置きます。
こういう状態で1ヵ月間置いて、途中の重量変化を測定しました。

                         第6図

Aは200ccを吸水したもの、Bは400ccを吸水したものです。開放系では蒸発が進み30日後には80~90%が蒸発します。条件は湿度60%、温度10~15℃の室内です。
おむつをした状態は完全に開放された状態ではないのですが、肌とおむつの間に隙間もあるため一旦吸収された尿は一部蒸発して外に出てきます。尿のガスは臭いを伴うので臭く感じます。高分子ポリマー層に水を十分吸収させビーカーに入れて隙間のあるように本を蓋にして放置した場合、表にあるように重量減少は僅かです。


Ⅵ パンツ・タイプ(介護用)をカバーとして尿とりパッドと併用した場合の問題点

パンツ・タイプ(介護用)紙おむつの価格が高いので尿とりパッドと併用している方を多く見かけます。ベテランの看護師さんの中で布おむつが絶対良いと言っている人もいます。本項目ではこの問題を考えてみました。

①テスト

尿とりパッドに200ccの水(35℃)を注入したものをパンツ・タイプ(介護用)の中にいれ、実際に装着して寝てみました。夜23時就寝。

                         第7図

夜中の午前2時15分、どうにも寝付けない。
内股の部分、腿の外側が汗をかいたようにびっしょり濡れた。不快感は最高です。
このまま朝まで我慢しようと思ったが、どうにも我慢できない。
とにかく寝られないのである。

とうとう起きて紙おむつを外しました。

(使用前)
  尿とりパッド           240g (水重量加える)
  パンツ・タイプ(介護用)     125g

(使用後)
  尿とりパッド           235g
  パンツ・タイプ(介護用)     130g (汗も加わっている)

重量変化は少なく、尿とりパッドからの蒸発分はパンツ・タイプ(介護用)とか身体に付いたと見られます。
紙おむつの内部は飽和蒸気圧の状態、水分なら湿度100%といった状態にあったはずです。

要点 ○パンツ・タイプ(介護用)と尿とりパッドの併用は装着者には不快である。
    ○パンツ・タイプ(介護用)とか身体に付いた尿分をどう考えるか。


Ⅶ 尿とりパッドと布おむつの併用はどうか

①テスト

前項と同じように尿とりパッドに水200ccを注入し、布おむつ(大きいパンツで代用)の中に入れ装着しました。この場合、朝まで寝られました。

(使用前)
  尿とりパッド           240g

(使用後)
  尿とりパッド           233g

尿とりパッドから7gの水が蒸発して布おむつ、衣類、布団に吸収されました。
身体も汗をかかず湿っぽくない。
衣類、布団に7g近い水分が移動したが、本人の身体に付く量も少ないのと、少なくとも身体の近くの湿度はそれほど高くないので、朝まで寝られたと思います。

②問題点

○この方法の問題点は、排尿の場合衣類、布団がかなり臭くなるだろうということです。臭くなる
  だけならまだしも、尿分とともに、後述するように細菌が繁殖するのが大きい問題です。
○布団を日光乾燥または紫外線を当てた乾燥をさせないと、細菌が多量に存在する環境の中
  で寝ることになり、身体に害を与えることになります。
  (薬剤を使っての殺菌は、それ自体の害の問題も出てくるので今後の検討課題です)

③パンツ・タイプ(介護用)をカバーとして尿とりパッドと併用するよりも布おむつカバーと尿とりパッ
  ドを併用する方が被介護者にとってはずっと快適ですが、翌日必ず衣類、布団などを殺菌しな
  いと逆に不衛生になり、被介護者に害を与えます。
  身体の清拭とともに、衣類の取り替え、布団の乾燥殺菌は必ず実施して下さい。
  パンツ・タイプ(介護用)と尿とりパッドの併用の場合、身体の清拭は絶対欠かせません。
  おむつの取り替えは、単に新しいおむつに替えるだけでは不潔です。念入りに清拭をすること
  が重要なことです。


Ⅷ 紙おむつの中は菌類の住み心地の良い住み家

菌類には細菌、真菌(かび)、酵母といったものがあるが、空中にはたくさんの菌類が存在しています。これら微生物は生き物なので種々の栄養源を必要としています。これら微生物に必要なものが、排出された尿の中にどういう形態で含まれているのでしょうか。

                         第8図

(1)炭素源
細菌はブドウ糖などのヘキソース、ショ糖などの二糖類、キシロースなどのペントースが好きです。各種の有機酸類も利用します。ブドウ糖、有機酸類は尿の中にあります。
カビはでんぷんを好み、二糖類、ヘキソース、ペントースも利用します。有機酸類、炭化水素も利用します。

(2)窒素源
細菌は無機態の窒素源としてアンモニウム塩をよく利用し、有機態の窒素源として尿素、アミノ酸、ペプトンなどを利用します。
アンモニウム塩、尿素、アミノ酸は尿の中に入っています。カビはアンモニウム塩の他、硝酸塩、尿素、アミノ酸などを好みますが、これらも尿の中に入っています。

(3)無機塩類
少量の無機塩も微生物の生育に不可欠で、P(リン)、K(カリウム)、Mg(マグネシウム)、S(硫黄)、Fe(鉄)、Cu(銅)、Cl(塩素)などを必要とします。これらも尿の中に入っています。

(4)育成因子
ビタミンは生育を著しく促進するものですが、ビタミンB1なども尿の中に入っています。

私達の目には見えませんが、カビの胞子(植物の種子のようなもの)は絶えず空中を漂い、やがて落下してあちらこちらに身を潜めていて、条件さえ整えば、すぐにそこで繁殖を始めます。
室内に生息するカビの多くは、温度20~25℃、湿度80%以上で栄養分が豊富な所を好みます。紙おむつの中、汚れた布団、衣類などにも、条件さえ整えば菌類の繁殖のかっこうの住み家となります。

                         第9図


Ⅸ おむつかぶれと皮膚の病気

①おむつかぶれ

例えば、トイレに行ってよくお尻を拭かないで出ると肛門周辺がかゆくてたまらなくなります。

倉田 正さんというお医者さんの「ウンコの話」という本があります。
肛門の周りはじめじめしていて、ウンコやおしっこの影響もあり清潔にするのも難しく、ここで皮膚の病気が起こりやすいです。

白癬症  いんきんたむしのことで、男性に多く、股の内側から尻一面にかけて輪状に拡がる。
湿疹    長く座り続けたり風呂に入れなかったりしたとき悪化する。

この他種々の皮膚病が起こると書いてあります。

西山 茂夫「皮膚からわかる病気」から
細菌や真菌(カビ)、ウイルスなどの病原微生物によって病気が起こる場合は、これらが直接皮膚に付いて症状が現れる場合と、一旦身体の中に入った細菌、真菌(カビ)、ウイルスによって間接的な経路で皮膚に症状が現れる場合があります。
例えば前者の場合、化膿性の細菌が皮膚に付くと、付く場所によって様々な化膿性の炎症を起こします。汗の出る腺に付くとあせものより(汗腺膿瘍)、皮膚の深いところにある脂肪細胞に付くと蜂巣織炎という病気になります。
白癬菌というカビが外から付いて皮膚に病気を起こした場合を白癬といいますが、股に付くといんきん手足だと水虫となります。
皮膚に外から付くウイルスもあります。


Ⅹ 紙おむつの熱伝導特性

①紙おむつそのものは断熱材であって、熱伝導率は小さいです。ただし排尿後は様子が異なっ
  てきます。
  実験はサーマル・コンパレーター方式を簡易化したもので、400cc吸水した部分としない部分
  を同時に7℃の冷源の上に乗せて紙おむつの反対側の温度変化を測定しました。
  下の図に示すように、水を含んだ部分は僅かではあるが熱伝導率が小さいことが解ります。

                         第10図

②吸尿部分の熱容量と冷えの問題

外気の温度が低い場合、紙おむつを付けた人が掛け布団を外したりすると、排尿後では吸尿部分の熱容量が大きいため外気で冷えると布団の中に入り直しても温度はなかなか元に戻りません。
吸尿部分の温度を上げるためには人間の方がかなりの熱を放出しなければならない。吸尿量が200ccであれば10℃温度を上げるのに2000calが必要であり、600ccであれば6000calの熱が身体から奪われることになります。
冷えるということです。
排尿すると気持ちが悪いので布団をはねることがあるでしょうが、布団を掛け直すだけでは身体は冷えます。こういうことからもおむつは取り替えることが必要です。


XI 排尿後の紙おむつの電気的特性

吸水性ポリマーは水を吸った後、ゼリー状になりますが、この部分は電気伝導性を持つようになります。
比抵抗は40~50kΩです。
排尿前は普通の衣類と同じく電気的絶縁物として取り扱えるのですが、排尿後は電気を通すものとして取り扱うのが良いと思います(電気毛布、電気敷布などの使用時)


XII 紙おむつの処分について

紙おむつは使い捨てとなるため、生産された紙おむつ量=ゴミ量となります。紙おむつの構成材量はほとんどがプラスチックです。東京都では現在可燃ゴミとして取り扱っていますが、市町村では取り扱いは異なります。
家庭で燃やす人もたまに拝見します。近所を憚って燃やす人、危険性を知らずに燃やす人などいます。
家の中で燃やしたら大変危険です。一酸化炭素とか青酸ガスが出る場合もありますので気を付けて下さい。


XIII 結び

1.排尿のリズム、排尿量、排尿速度を把握して下さい。この数値によって紙おむつの取り替え
  の時間間隔、1つの紙おむつの使用能力が決まります。1回の排尿後に紙おむつを取り替え
  るのが良いのです。身体の清拭は欠かせません。

2.カバーとしてパンツ・タイプ(介護用)を使用して尿とりパッドを併用する場合はカバーの紙おむ
  つは日光乾燥してから再使用して下さい。身体の清拭は取り替え時、必ず実施して下さい。

3.布おむつと尿とりパッドの併用の場合、衣類の取り替え、布団の日光乾燥は毎日実施して
  下さい。

4.外気が冷えている夜間、布団を外してしまう場合、もし排尿していたらおむつは必ず取り替え
  て下さい。そのままでは身体が冷えます。

5.紙おむつを2つに切って使用しないで下さい。吸水性ポリマーが目に入ると危険です。買った
  ままの状態で使って下さい。

6.排尿速度が速い人は紙おむつの端にギャザーが付いたものを使うのが良いでしょう。

7.紙おむつの処分はゴミとして捨てて下さい。家庭内で燃やすのは危険です。

8.紙おむつは装着している人は不快なものです。できれば使わなくて済む方法を工夫して下さ
  い。


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